痔核の手術について
痔は治る
痔核の脱出があまりなく軽度の出血や痛みだけの時は、毎日お風呂に入ったり便通を整えるなどの日常生活に注意することに加え、坐薬や軟膏を使うことでよくなります。しかし次のような場合、完全に治すためには手術をする必要があります。
- 痔核が肛門外に出っぱなしで元にもどらない
- 咳をしただけでも簡単に脱出し、日常動作に支障がある
- 出血がひどく貧血を来す
痔の手術は怖くない
痔核の手術は短時間の手術です。きちんと麻酔をしますから手術中の痛みはまったくありません。術中に患者さんに声をかけると「もう始まっているんですか?」という程です。15~30分ほどで終わります。以前は痔の手術のあとに肛門が狭くなったり、逆に肛門のしまりが悪くなってしまうなど後遺症もしばしばみられましたが、現在行われている手術は、正常なところは残し悪い部分だけとる結紮切除術という方法で昔のような後遺症はほとんどありません。安心して手術を受けて下さい。
手術前の検査
特に大掛かりな検査はありません。血液と尿の検査、その他、血圧やレントゲン、心電図などです。排便についても、手術に影響があるほどたまっていれば軽い浣腸を行いますが、当日に排便を済ませていればそれで十分です。また、手術直前の食事はできませんが、少なくとも前日まではふつうに過ごしていて構いません。
手術の実際
痔核は通常3カ所に発生しています。それぞれの痔核に対して、まず皮膚を切開し、痔核を剥離します。そして痔核の根元を糸でしっかり結び、血管を縛ってしまいます。そのあと痔核部分だけを切除します。これが結紮切除術という方法で最も標準的な術式です。切開したところは、その大きさなどによって、開放しておく場合もありますし、またある程度縫合する場合もあります。
術後の経過
痔の手術には少し変わった点があります。痔核の部分、すなわち肛門の中と、肛門の外側の皮膚の両方に傷口を残します。肛門は便が通過するので汚れやすいところです。便が肛門内の傷にたまってしまって細菌で炎症を起こしたりしないように外側の皮膚に出口を創っておくのです。すなわち皮膚の傷は、肛門内の傷を早く治すために下水道の役割を果たすのです。これをドレナージといいます。この傷の管理が術後のポイントになります。
傷のためには、肛門に負担をかけるような激しい運動はよくありませんが、術直後以外は特に安静の必要はありません。大切なのは、肛門の皮膚の傷を清潔に保つこと、そしてきちんとした排便習慣を身につけることです。便秘や下痢は傷口を広げたり刺激したりするので、場合によっては便通調整のためにお薬が出されることもあります。
理想的な傷の治りはまず肛門の傷が治り、そのあと皮膚の傷が治ることです。皮膚側が先に治ると下水道がつまってしまうことになり、中の傷が治りにくくなります。通常、手術後10~20日で退院となります。傷口が完全に治るまでには手術してから約1カ月を要します。しかし傷が治ってもつっぱった感じなどの違和感はしばらく残ります。弾力性が出て本来の肛門のようになるには数カ月かかります。
時期 | 入院手術 | 日帰り手術※ |
---|---|---|
手術当日 |
ベッド上安静 |
麻酔覚醒後帰宅/食事可・安静 |
1日後 | 診察(手術後の傷のチェック) | 診察(手術後の傷のチェック) 入浴・排便開始/歩行・家事自由 |
2日後 | 初めての排便/座浴・入浴開始 | 仕事等に支障が少ないように
日曜日を挟みます |
3日後 | ↓毎日診察 | 診察(排便後の傷のチェック) |
4日後 | 出勤・デスクワーク可 | |
10日後 | 退院・出勤・デスクワーク可 | ↓1〜2週間に1度の診察 |
↓1〜2週間に1度の診察 | ||
1ヶ月後 | 完全治癒 海外旅行や激しいスポーツ可 |
※日帰り手術には高度な医療技術が必要なため、対応可能な医療機関が限られます。
術後の気になる点は?
手術直後の痛みは?
排便のし方
肛門が十分開くように思い切って足を広げ、さらに両手でお尻を引っ張り上げてする
ガスの出し方
二つ折りにした座布団をお尻の下に置き、仰向けになって膝の裏を抱えて丸くなる
女性の排尿
カラダを充分に前に倒して行うとしみない
座浴のし方
便器の上に洗面器を置き、ぬるま湯を入れてつかる
手術時の麻酔の効果が2~3時間持続しますので、その間の痛みはありません。しかし手術後には傷が残っていますので、麻酔が切れると少し痛みが出てきます。その時は、仰向けに寝るのではなく、横向きで膝を曲げ、肛門に力を入れないようにして下さい。そうすると少し楽になります。現在の手術は、昔と違い苦しむ程の痛みではありませんし、徐々に軽くなっていきますから安心して下さい。
排便時の痛みは?
通常手術後2日目に最初の排便がありますが、その時はやや痛みがあると思います。しかし、排便姿勢にさえ気をつければそれほどではありません。痛みを恐がって便を我慢すると、便秘になり、よけいに痛くなるのでよくありません。おしりの傷は排便をしながら治していくものです。
排便後の処置は?
排便のあとは、坐浴などでおしりを洗い、そのあと十分に乾燥させておきましょう。洗っても、濡れたままだとかえって傷によくありません。
出血は?
排便時に紙につく程度の出血をみることがありますが、これは開放してある傷口からの出血なので問題ありません。傷の治りとともに止まってきます。出血が多く、かたまりとして出たり、下痢するように出る場合は、医師に相談して下さい。
特別な食事?
特別な食事制限はありません。手術当日や1日後はお粥程度のものになることが多いですが、その後はふつうの食事になります。排便の痛みを気にしてあまり食べない方がいますが、むしろしっかり食べてきちんとした排便習慣をつけて下さい。
お風呂に入れる?
入れます。おふろに入ることは、清潔になり、傷も早く治ります。極端な長風呂は傷によくありませんが、毎日おふろに入って下さい。
化膿しない?
便にはたくさんの細菌が含まれていますから、排便の後はよく洗って下さい。傷をよく洗って清潔にしていれば化膿することはありません。
後遺症は?
現在行われている手術法は痔核部分だけを取り除く結紮切除術という方法です。正常部分は残しますから後遺症はほとんどありません。
再発しない?
痔核部分は取り除かれますから、再発することはありません。しかし、痔核の主な原因は便秘です。トイレで10分以上いきむことが何十年も続くと手術をした部位以外に痔核が生じることがあります。日常生活には十分気をつけましょう。
退院後の注意点
退院といっても完全に治ったわけではありません。痔核は手術で取り除かれましたが、手術の後の傷はまだ残っています。この傷を上手に、そして早く治すには次のことをよく守って下さい。
おしりはいつも清潔に。
肛門は便の通り道、どうしても汚れやすいところですが、汚れたままでは傷の治りによくありません。排便後は坐浴などでおしりを洗い、そして十分乾燥させておくことが大切です。
下痢や便秘をしない
便秘によるかたい便で傷がさけたり、下痢で傷が刺激されたり、どちらもよくありません。便通の調整に心掛けましょう。
肛門に負担をかけない。
お腹に力を入れるような動きや、自転車に乗ること、長時間の同一姿勢は肛門に負担をかけることになります。しばらくはおしりにやさしく。
医師の指示を守る。
手術の是非は、術後の管理で決まるほどです。指示はきちんと守って下さい。また、症状に応じてお薬が出されますので正しく使用して下さい。軟膏や座薬は、排便時の潤滑剤としての役割を果たしますから、夜に使うのも効果的です。
ご注意:このページは一般的な知識や治療方法などをご紹介したもので、医療機関により大きな違いがあります。 肛門は大変複雑で繊細な部位ですので、信頼できる医療機関をご受診ください。