ヘルシー・メモ「痔」

名医が語るあなたの健康

・痔ろうの治療法
 膿が溜まった直腸肛門周囲膿瘍の段階は皮膚を切って膿の出口をつくる処置(切開排膿)を外来で行い、抗生物質を使用して炎症を抑えます。
 しかし痔ろうが形成されると、入院しての手術が必要になります。痔ろうの手術は膿の管を入り口から出口まで切開して開放する「切開開放術」が基本です。膿の管のトンネルの屋根を切り開くような手術で、あとは下から肉が盛り上がって自然に治るのを待つ方法です。
 ただし、切開開放術では膿の管の通り方や管の位置によって括約筋を大きく傷つけてしまうケースがあります。そのような場合には括約筋をできるだけ傷つけないようにする「括約筋温存術」が行われることがあります。
 括約筋温存術には、さまざまな方法がありますが、代表的なものとしては、痔ろうの入口と膿のもととなっている部分を取り除き、そのあと縫合する方法です。

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 ここでもう一度、痔核、裂肛、痔ろうの特徴について表にまとめておきましょう。

表:痔核、裂肛、痔ろうの特徴
種 類 特 徴
痔 核 肛門に負担をかけることによって肛門を閉じる役割をしているクッション部分が腫れたり、出血したり、脱出する。出血はあるが、初期の場合は痛みは伴わないことが多い。内痔核と外痔核がある。
裂 肛 便秘などによる硬い便の排泄によって肛門が切れたり、裂けたりすることで、排便時に鋭い痛みを感じる。出血はそれほど多くないが排便後もしばらく痛みが続き、肛門が狭くなることもある。
痔ろう 歯状線のくぼみ(肛門陰窩)から細菌が侵入し、肛門周辺に膿が溜まり(直腸肛門周囲潰瘍)、その膿がいったん出たあと膿の管が生じた状態。痔の中で唯一発熱を伴い、排便と関係なく痛みを感じる。

痔と同じ症状で注意すべき病気  痔と同じ症状を現す病気で注意しなければならない病気に、大腸の病気、つまり大腸ポリープや大腸がんなどがあります。
 たとえば排便の際の出血には、肛門からの出血だけではなく、より奥の大腸から出血している場合もあるのです。
 最初に述べたように、痔は大変にポピュラーな病気です。便に血がついたり排便の際に出血したというと、ともすれば痔、つまり痔核や裂肛と考えがちです。しかし、大腸からの出血も疑うべきです。
 以前、肛門から出血をしたと受診した1000人の方の出血の原因を調べたことがあります。その、ほとんど、93%は痔からの出血でしたが、残りの7%は別の原因でした。7%のうち3%は大腸ポリープからの出血、2%はがんからの出血、2%は大腸の炎症からの出血でした。

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